経営業務の管理責任者(経管)を徹底解説!役割から要件、よくある落とし穴まで

建設業許可の取得を検討されている企業の担当者や経営者の皆さん、**「経営業務の管理責任者」**という言葉を聞いて、「なんだか難しそう…」「うちの会社で要件を満たす人がいるのかな?」と不安に感じていませんか?

この通称「経管(けいかん)」と呼ばれる存在は、建設業を営む上で非常に重要な役割を担っており、許可制度の根幹をなすものです。

この記事では、経営業務の管理責任者について、その役割から具体的な要件、そして多くの会社が陥りがちな「落とし穴」まで、徹底的に解説します。この記事を読めば、経管に関する疑問がすべて解決し、スムーズな許可申請への道筋が見えてくるはずです。


第1章:経営業務の管理責任者(経管)とは何か?

まずは、経管の定義と、なぜこれほどまでに重要視されるのかを理解することから始めましょう。

1. 経管の定義と役割

経管とは、建設業を営む上で、その事業全体の経営を適切に管理・監督する責任者のことです。建設業法では、許可を受けるための重要な要件の一つとして、この経管を置くことが定められています。

その役割は多岐にわたりますが、主に以下の3つの側面が挙げられます。

  • 経営の舵取り役 経管は、会社の経営方針や事業計画を策定し、その実行を指揮します。単に現場の技術に詳しいだけではなく、会社の資金繰り、人材育成、将来的な市場動向まで見据えた経営判断が求められます。
  • コンプライアンスの番人 建設工事は、様々な法令(建設業法、労働基準法、安全衛生法など)に厳しく縛られています。経管は、これらの法令を遵守し、適正な方法で業務が遂行されるように社内体制を整える責任を負います。
  • 対外的な信頼の証 経管の存在は、その会社が過去に適切な経営経験を持つ人物によって運営されており、今後も健全な経営が期待できることの証明となります。これは、発注者や金融機関からの信頼を得る上で非常に重要な要素となります。

2. なぜ経管が求められるのか?

建設業法が経管を必須としている背景には、建設工事の公共性と特殊性があります。建設工事は、私たちの生活の基盤となる道路、橋、建物などを造る重要な仕事です。もし、経営基盤の弱い会社が安易に工事を受注し、倒産したり、手抜き工事を行ったりすれば、社会全体に大きな損害を与えかねません。

経管というフィルターを設けることで、国は、経営能力と経験を持つ企業だけを許可し、建設業界全体の健全性を保とうとしているのです。


第2章:経管になるための具体的な要件

それでは、具体的にどのような人が経管になることができるのでしょうか。要件は、大きく分けて「経営経験」と「常勤性」の2つに集約されます。

1. 経営経験に関する要件

最も複雑で、多くの申請者がつまづくのがこの経営経験の要件です。建設業許可には、一般建設業と特定建設業の2種類があり、それぞれで求められる経験が異なります。

(1) 一般建設業の場合

以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 申請会社での役員経験(5年以上) 建設業を営む法人において、取締役、執行役員など、経営業務を総合的に管理した経験が5年以上あること。個人事業主の場合は、事業主として5年以上の経験が必要です。
  • 準ずる地位での経営経験(6年以上) 役員に準ずる地位(例:支店長、営業所長など)で、建設業の経営業務を補佐する立場として6年以上の経験があること。この場合、経営事項審査の「技術職員数」に含まれない立場でなければなりません。

(2) 特定建設業の場合

特定建設業は、元請けとして4,500万円以上の工事を請け負う場合に必要となる許可です。そのため、一般建設業よりも厳しい要件が課されます。

  • 申請会社での役員経験(2年以上) 建設業を営む法人で、取締役などの役員として2年以上の経験があること。
  • 一般建設業許可会社の経営経験(5年以上) 一般建設業の許可を持つ会社で、5年以上の経管としての経験があること。
  • 指定建設業の経験(2年以上) 指定建設業(土木一式、建築一式、電気工事、管工事、鋼構造物、舗装工事、造園工事)については、経管としての経験が2年以上必要です。

2. 常勤性に関する要件

経管は、その会社の**「常勤」**でなければなりません。これは、単に社員として在籍しているだけでなく、事業所の営業時間内に常に勤務し、経営業務に従事できる状態にあることを意味します。

  • 常勤と認められるケース
    • 会社の健康保険や雇用保険に加入している。
    • 住民票や所得税の源泉徴収票などで、事業所が生活の本拠地であることが確認できる。
  • 常勤と認められにくいケース
    • 複数の会社の役員を兼任している。
    • 他の会社で正社員として勤務している。
    • 遠方に居住しており、通勤が困難である。

3. 経験を証明するための書類

経管の要件を満たしていることを証明するためには、以下の書類が必要となります。

  • 役員経験を証明する書類
    • 履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)
    • 閉鎖謄本
    • 確定申告書の写し(個人事業主の場合)
  • 経営業務の補佐経験を証明する書類
    • 組織図
    • 職務内容がわかる辞令や規程
    • 雇用保険の加入証明書や健康保険証
  • 常勤性を証明する書類
    • 健康保険証や住民票
    • 出勤簿や賃金台帳など

これらの書類は、過去の経験を遡って証明する必要があるため、日頃から保管しておくことが非常に重要です。


第3章:よくある「経管」の落とし穴と対処法

経管の要件は複雑であり、多くの申請者が思わぬ落とし穴に陥りがちです。ここでは、特に注意すべきポイントとその対処法を解説します。

落とし穴1:役員経験=経管経験ではない

「取締役をやっていたから大丈夫だろう」と安易に考えている方が多いですが、単に役員であったというだけでは、経管の要件を満たしません。重要なのは「経営業務に携わっていたか」という実質的な経験です。

【対処法】 経営業務の内容(契約締結、資金管理、人材管理など)が客観的に証明できる資料を準備しておくことが重要です。具体的な職務内容がわかる組織図や規程、議事録などを保存しておきましょう。

落とし穴2:常勤性の判断は厳しい

「通勤圏内に住んでいるから大丈夫だろう」と考えていても、常勤性が認められないケースがあります。特に、高齢の役員や、遠方の会社の役員を兼任している場合などは、慎重な判断が必要です。

【対処法】 常勤性を明確に証明するために、健康保険や雇用保険の加入状況、通勤時間、さらには業務日報や出勤簿などを詳細に記録しておきましょう。

落とし穴3:経験年数の不足

一般建設業の要件である5年や6年という期間は、過去の経験を遡って証明する必要があるため、書類が揃わず、経験年数が不足してしまうケースが多々あります。

【対処法】 過去の勤務先で経営業務に携わっていた場合、その会社から「経営業務の管理責任者証明書」を発行してもらうことが有効です。退職時にこの証明書をもらっておくか、申請時に依頼することを検討しましょう。


第4章:まとめと今後の展望

経営業務の管理責任者は、単なる許可要件ではありません。それは、会社の信用を築き、事業を永続的に発展させるための土台となる存在です。

  • 経管は、会社の経営を担う「柱」である。
  • 要件は厳格だが、一つずつ丁寧に確認すればクリアできる。
  • 書類の準備は計画的に行い、抜け漏れがないようにする。

もし、この記事を読んで、経管の要件について不安を感じられた場合は、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。専門家のサポートを得ることで、複雑な要件をスムーズにクリアし、許可取得への最短ルートを歩むことができるでしょう。

建設業界の未来を担う皆さんが、この重要な役割を理解し、事業を成功に導くことを心から願っています。


【参考文献】

  • 国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」
  • 各都道府県「建設業許可申請の手引き」

※注記 この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に応じた法的助言ではありません。許可申請の際は、必ず所轄の行政庁または専門家にご相談ください。

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