離婚後の新しい「法定養育費」制度とは?

離婚を考えるとき、お子さんの将来のために一番気になることの一つが「養育費」ではないでしょうか。これまでの制度では、離婚時に養育費の取り決めをしないと請求が難しいという課題がありました。

しかし、2024年5月に成立した改正民法によって、**「法定養育費」**という新しい制度が導入されることになりました。これは、離婚後の子どもの生活を守るための画期的なルール変更です。

このブログでは、法務省の資料を基に、法定養育費とは何か、いつから始まるのか、そして私たちの生活にどう影響するのかを分かりやすく解説します。


法定養育費とは? 約束がなくても請求できる新しいかたち

法定養育費とは、離婚時に養育費の取り決めをしなくても、法律に基づいて一定額の養育費を請求できる制度です。

これまでは、父母間の話し合いや調停などで養育費の額を決めていなければ、請求することができませんでした。しかし、DVなどの事情で話し合いが困難だったり、合意に至らないまま離婚してしまったりするケースも少なくありませんでした。

新しい制度では、主に子どもの面倒を見ている親(監護親)が、もう一方の親に対して、離婚の時点から法定養育費を請求できるようになります。

ポイント

  • 離婚時に養育費の取り決めがなくても請求可能。
  • 子どもの最低限の生活を守るための仕組み。
  • DVなどで話し合いが難しい場合でも利用できる。

いつから始まるの? 金額はいくら?

この新しい法律は、2026年(令和8年)5月までに施行される予定です。ただし、注意点として、この制度が適用されるのは、改正法が施行された後に離婚した場合に限られます。施行前に離婚した場合は、法定養育費は発生しません。

気になる金額ですが、法務省が公表した省令案では子ども1人あたり月額2万円とする案が示されています。この金額は、子どもの最低限度の生活を維持できる費用を基に計算されています。最終的な金額は、今後正式に決定される予定です。

また、この法定養育費は離婚日にさかのぼって請求することが可能です。例えば、離婚から1年後に請求した場合でも、1年分をまとめて請求できます。


法定養育費はいつまで? 支払い義務がなくなるケースは?

法定養育費は、あくまで暫定的・補充的な制度と位置づけられています。父母が話し合いや家庭裁判所の手続きを通じて、それぞれの収入などに応じた適正な養育費を決めることが最も重要です。

法定養育費の支払いは、以下のいずれか早い日まで続きます。

  1. 父母が養育費の取り決めをしたとき
  2. 家庭裁判所での養育費の審判が確定したとき
  3. 子どもが18歳に達したとき

支払いが難しい場合はどうなる?

支払い義務を負う親が、失業などにより経済的に困窮している場合もあるでしょう。

そのような場合は、支払能力がないことや、支払うことで自身の生活が著しく困難になること(例えば生活保護を受給しているなど)を証明すれば、法定養育費の全部または一部の支払いを拒むことができます

収入が乏しい場合には、父母の話し合いによって、法定養育費よりも低い金額を取り決めることも可能です。もし当事者間での話し合いが難しい場合は、家庭裁判所に調停などを申し立てることができます。


まとめ:子どもの未来を守るための大切な一歩

法定養育費制度は、離婚後の養育費の未払い問題を解決し、子どもの利益を守るための重要な法改正です。

  • 合意なしでも請求可能: 離婚時に取り決めがなくても、法律上の権利として養育費を請求できます。
  • 暫定的なセーフティネット: あくまで最低限の保障であり、最終的には父母間の話し合いで適正な額を決めることが推奨されます。
  • 施行後の離婚が対象: 2026年5月までの施行日以降に離婚する方が対象となります。

この新しい制度が、多くの子どもたちの健やかな成長を支える一助となることが期待されます。離婚や養育費についてお悩みの方は、弁護士などの専門家や、法テラスなどの相談窓口に相談してみましょう。

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